● CASE.02

老舗うなぎ料理店のHACCP取得を支援。
衛生管理レベルの向上はもちろん、
従業員の意識改革や仕事の効率化が実現

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● INTERVIEW

株式会社かねよ
常務取締役社長 村田章太郎さま

Q : 明治5年に創業したうなぎ料理の老舗「かねよ」様では、高澤品質管理研究所のサポートを受け、平成29年10月にSGS-HACCP認証を取得しました。まずはそのきっかけについてお聞かせください。

村田 : 当店は140年以上の歴史を持つ老舗ですが、長年積み上げてきた信頼も、一度食中毒を出せば失われてしまいます。ですから時代に合わせたやり方に変えて、衛生管理レベルを向上したいと思っていました。同時に認証取得を目指すことで、従業員の意識改革ができればと考えていたんです。ただ、当初はHACCPなんて、ものすごくハードルが高くて、無理だろうと思っていました。
そんなときに参加したのが「滋賀県食品高度衛生管理認証」の講習会でした。この講習会で講師を務めていたのが高澤品質管理研究所の高澤所長で、ワークショップでは担当さんにアドバイスしていただきました。高澤所長の話は分かりやすかったですし、ワークショップを通じて担当さんとの距離もぐっと近くなりました。それで懇親会のときに相談して、サポートをお願いしたんです。
髙澤村田常務からは老舗といえども、この先歴史を紡いでいくには従業員の意識や組織のあり方を見直したいという思いがひしひしと伝わってきました。そこで、HACCPを内部統制に役立ててはいかがでしょうかとご提案しました。
Q : 具体的にはどのように取り組みを進めたのでしょうか。

村田 : まず、我が社はHACCP認証の取得を目指して取り組むという経営トップの宣言からスタートしました。ただし、会社が従業員に押し付けるのではうまくいかないと思いました。そこで、店を休みにしてキックオフミーティングを開き、HACCPの必要性を説明し、みんなで一丸となって取り組むんだという雰囲気を作りました。

担当 : キックオフミーティングには高澤と私も参加しました。当初、従業員の皆さんからは余計な仕事が増えるのではと心配する声もありました。しかしながら、今まで食中毒を出さずに営業しているわけですから、衛生管理に必要なことはできているわけで、これを記録して保管したり、間違ったやり方をしているところがあれば一緒に改めていきましょうという話をしました。
その上で最初はHACCPの土台となる5S活動から始めました。私が月に2回、店舗を巡回し、「あそこが汚れている」「ここを片付けて」と指摘し、次回訪問時までに改善してもらうのです。

村田 : 最初は担当さんの顔を見て、うんざりした様子の従業員もいたようですが、しばらくすると分からないところを積極的に質問するようになるなど、前向きに意識が変わり始め、嬉しく感じました。

担当 : 5Sに続いては一般衛生管理プログラムの構築に取り組みました。例えば器具の洗浄であれば、まずは現在の洗浄手順や使っている洗剤などを書き出してもらい整理しました。もしも十分に洗浄されていないようであれば手順や洗剤を見直すなどして、かねよ様に合ったプログラムを完成させました。

村田 : 運用当初は記録の付け方が間違っていたり、なかなか提出されなかったりと不備もありました。従業員にすれば、正直、はじめは面倒だったと思うのですが、半年ほどすると慣れて、一連の流れを習慣化できましたし、記録も苦にならなくなったように思います。
Q : その後はいよいよHACCPに取り組むわけですね。

担当 : 担当そうです。メイン商品であるうなぎの蒲焼きと白焼きを対象に進めましたが、最も苦労したのはモニタリング方法の設定でした。重要管理点(CCP)であるうなぎを焼き上げる工程は職人技で、これを温度と時間で連続的に監視するのは至難の業でした。悩み抜いた結果、たどり着いたのは職人をCCPに設定することでした。具体的には、いくつかの要件をクリアした職人には会社が認定証書を発行し、これを与えられた職人だけがうなぎを焼くことで安全性を担保するという方法です。
認定証書の発行にあたっては職人が焼き上げたうなぎは安全であるという科学的な根拠を示すため、繁忙期である5月から8月にかけて毎日蒲焼きの中心温度を測定し、厚生労働省の定める75℃で1分以上の加熱という基準をクリアしていることを確認しました。
Q : 認証を取得してみていかがでしたか。

村田 : 従業員の意識が高まり、衛生管理レベルの向上につながったのはもちろんですが、さまざまな情報の共有化が進んだ点も良かったと思います。例えば、湯飲みを落として割ってしまったという情報が共有されれば、再発防止策をみんなで考えてリスクを減らすことができます。また、当社では2店舗を運営しているのですが、一連の取り組みを通じて、各店舗でやっていた共通の仕事を一本化するなど、効率化も進みました。空いた時間を使って、さらにおいしいものを作るにはどうしたらいいか考えていきたいですし、残業削減や有給休暇の取得推進にもつなげたいと思っています。HACCPによってうなぎを焼く職人の要件も明確になりましたから、若手の育成、評価にも役立つと思います。認証を取得して本当に良かったと思いますし、「すごいな」と感心してくれるお客様もいらっしゃいます。

髙澤 : 村田常務は十分に理解なさっていますが、認証取得はゴールではなく、継続が重要です。これからもHACCPの解説者としてサポートさせていただきますので、よろしくお願いいたします。


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