● CASE.05

新工場の稼働に合わせ、
FSSC22000の認証取得へ。
わさび加工品の輸出増目指す

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● INTERVIEW

藤屋わさび農園有限会社

藤屋わさび農園有限会社 専務取締役
望月啓市さま

藤屋わさび農園有限会社 品質保証室室長
山本 優さま

株式会社ヤマウラ 製造部
伊東千砂さま

Q : 藤屋わさび農園では北アルプスに抱かれた安曇野で、わさび栽培をはじめ、刻みわさびやわさび漬けなど、加工品も製造しています。まずは髙澤品質管理研究所とお付き合いが始まったいきさつをお聞かせください。

望月 : 当社は約90年前にわさび農家として創業しました。平成9年に工場を建ててからは、加工業も手がけています。この工場が手狭になったことに加え、衛生管理の水準をお客様のご要望に合わせて高めるため、新工場を建設することにしました。新工場は令和4年4月の稼働、同年7月のFSSC22000認証取得を目指しています。当社が取得できるのかと不安に思っていた時、工場建設でお世話になるホシザキ北信越株式会社さんから髙澤さんを紹介していただきました。
Q : その後、取り組みはどのように進んでいますか。

望月 : 令和3年3月から、髙澤さんには月に一度、当社まで出向いていただき、HACCPやFSSC22000に関する知識などについて、教えてもらっています。同時に、工場や清掃方法などを点検してもらい、改善に向けた指導を受けています。取り組みの中心は、私のほか、山本や伊東、それに新工場の建設に合わせて採用した従業員を含めた食品安全チーム6名です。

髙澤 : FSSC22000はHACCPよりも要求事項がたくさんあります。このような難しいプロジェクトをコロナ禍の中で進めるため、教育、トレーニングは現地訪問に加え、ウェブコンサルティングも併用しています。また、FSSC22000は食品安全だけでなく食品防御を強化するためハード面での要求も厳しく、新工場のレイアウト等についても助言させていただいています。ちなみに新工場の設計及び施工は当社主催の「HACCP設計士養成研修」を受講された株式会社ヤマウラさんが手がけていらっしゃいます。ヤマウラさんは食品工場ブランド「オイシールド」を展開され、長野県内に多くの食品工場の実績があります。


株式会社ヤマウラ「オイシールド(Oishield)®」
https://yamaura.co.jp/sector/builds/haccp/
Q : 活動開始から約1年が経過しました。どのような収穫があったでしょうか。

望月 : 1年前までは農家の延長で加工品を作っているような感じでした。衛生管理について、自分たちなりに勉強して製造していましたが、それが本当に正しいのか確信がなく、取引先からの質問に知識不足で答えられないこともありました。しかし、髙澤さんの指導を受けてからは、自信を持って商品を製造、出荷できるようになり、取引先の質問にもしっかりと答えられるようになりました。従業員の考え方や清掃方法など、すべてががらりと変わりましたね。

髙澤 : 謙遜されていますが、同社は大手ともしっかりとリスクコミュニケーションをとりながら取引をされていました。衛生管理にも非常に熱心に取り組んでおられて、もちろん大きな事故もありません。ただ、エビデンスがないため不安に思われていたわけです。そこで、確信を持てないところについては根拠を明確にし、なぜうまくいっているのかを論理立てて説明させていただきました。一方で、設備の洗浄など不十分なところは、現状や対策の効果を検証しながら活動に取り組み、これによって見違えるように改善が進みました。
Q : 何か事例を紹介してもらえますか。

山本 : 例えば、私たちはこれまで、見た目がきれいになればいいと思って床や排水溝、設備などを清掃してきました。しかし、実際に検査してみると菌が残っていることが分かったため、手順や洗剤などを見直し、何度もトライ&エラーを重ねながら、菌を確実に減らせる清掃方法を確立しました。

伊東 : 以前、加工品から検出される土壌菌に悩まされたことがありました。当時は原料に問題があると考え、一生懸命洗っていたのですが、髙澤さんからの指摘で原料を洗う際に使っていた攪拌機の洗浄不足が原因だったと気付かされました。これも正しい洗浄方法を指導してもらうことで根本的な解決につながり、無駄な工程も省けました。

山本 : 従来の工場はスペースが狭かったこともあり、異物混入対策やアレルゲン物質の交差汚染対策も不十分でしたが、髙澤さんのアドバイスのおかげで対策を立てることができ、ようやく実践できるようになってきました。

伊東 : 指導を受けるうち、今までできていなかったことが見えてきました。例えば、トレーサビリティのために必要となる「記録」もその一つです。記録のやり方も最初はよく分かりませんでしたが、今では理解が進み、記録用紙も自分で作れるようになりました。

望月 : 洗浄や記録には現場の従業員の協力が不可欠ですが、化学的な根拠に基づいて作業を標準化することで、従業員にも納得感をもって取り組んでもらえるようになったため、教育、指導もやりやすくなりました。
Q : 山本さんは認証取得プロジェクトの開始にあたって、高澤品質管理研究所が主催する「HACCP設計士養成研修」を受講されました。研修での学びがその後、どのように役立っていますか。

山本 : 認証取得に向けたスタートラインに立つための基本的な知識を学ぶことができました。講義だけでなく、ワークショップもあり、とても有意義な3日間でした。受講を終えて工場に戻ると、リスクや足らない部分がいろいろと見えてきて、その後の改善につなげることができました。その後、実践を通してさらに理解が深まっています。学んだことを新工場の稼働に合わせて増える従業員にも伝えていきたいですね。
Q : 認証取得に向け、審査が間近に迫っています。今後の抱負を聞かせてください。

望月 : 認証取得に向けた活動を通じて、会社自体がよくなり、活気が生まれています。それを評価してくれて新しいお客さんが来てくれることもあります。今後も取り組みを継続し、さらにいい会社に成長できるよう皆で頑張っていきたいと思います。また、当社では近年、欧米やアジアへの輸出が急拡大しています。現在、生わさびの売り上げの1/3を海外向けが占めるまでになりました。国際規格であるFSSC22000取得を機に、今後は加工品の輸出も増やしたいと考えています。髙澤さんには引き続き、クレーム管理等についてもサポートをお願いしたいと思っています。

髙澤 : 取り組み開始から約1年がたち、衛生管理やさまざまなリスクに関する会社の感受性が非常に高まっていると感じます。審査に向けて忙しい日々が続きますが、大事なのは構築した食品安全システムを動かし、維持、向上していくことです。これからも品質向上、販路拡大に寄与できるようご支援させていただきますので、一緒に頑張っていきましょう。


藤屋わさび農園 ホームページはこちら
http://fujiyawasabi.com
https://www.youtube.com/watch?v=sDnf4S4qTq8
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