● INTERVIEW
株式会社ヤマウラ
株式会社ヤマウラ 代表取締役社長
山浦正貴さま
株式会社ヤマウラ 専務取締役営業本部長
藤木公明さま
株式会社ヤマウラ 営業部長
島岡博さま
Q : ヤマウラ様では総合建設業を営んでおられます。事業の特徴や強みは何でしょうか。
山浦 : 一つは産業機械などを作るエンジニアリング事業部を持っていることです。食品関連では自動搬送機や焙煎機などを設計、製作、据付まで行っています。また、設計・施工・アフターサービスまで一貫したサービスを提供していますから、責任の所在が明確で、クレーム等があれば設計にフィードバックして改善するなどして、お客様の満足度を高めている点も強みだと思います。
Q : ヤマウラ様は令和2年10月に髙澤品質管理研究所が主催する「HACCP設計士養成研修」を受講されました。そのきっかけをお聞かせください。
山浦 : ホシザキ北信越株式会社さんと仕事した際、名刺に食品関係の資格が記載してあり、当社でも資格が取れればと思いました。というのも、当社の営業スタッフや設計担当者が食品工場の経営者や工場長と話をする上で、食品衛生管理について理解していることは、お客様にとって大きな安心感につながると思ったからです。また、私たちにとっても食品工場に求められることをしっかり理解して計画を進めることが可能になり、お客様のニーズを建物に反映する対応力もアップします。そこで同社に相談したところ、「HACCP設計士」という新しい資格ができることを教えてもらい、髙澤さんを紹介していただいたのです。
Q : 実際に受講してみていかがでしたか。
山浦 : 営業や設計、エンジニアリングの各部門から選抜した30名の社員が3日間の講義やワークショップに参加し、無事全員が修了書をいただきました。正直、全く異業種の研修であり、初めて聞く専門用語も多く戸惑いもありましたが、私たちが生活する上で一番大事な「食」に関する勉強ということで大変有意義でしたし、集中して受講できました。
Q : 研修会で講師の一人を務めた小沼博隆先生(公益社団法人 日本食品衛生協会学術顧問)はヤマウラ様の取り組みをどのように感じましたか。
小沼 : 皆さん非常に熱心に取り組んでいたと思います。食品衛生管理の研修は初めてと伺いましたが、私もびっくりするくらい専門的な知識を持っていて感心しました。
山浦 : 社員には研修前にテキストを渡し、勉強しておくように伝えました。単に勉強しておいてと言うだけでは、なかなか身が入らないでしょうから、最終日にテストがあり、合格しないと資格を取得できないんだよと毎日のように言いましたね。
藤木 : 加えて、以前から食品工場を設計・施工した実績があったため、仕事を通じて自然と知識を身に付けていた社員も多かったと思います。今回の受講はさらに理解を深める機会となり、食品工場の受注を一段と伸ばしていくためのいいステップになりました。
Q : 「HACCP設計士養成研修」を受講したことで社員様に何か変化があったでしょうか。
山浦 : 営業スタッフや設計担当者が食品事業者と打ち合わせする際、ゾーニングや衛生エリアの考え方、防虫・結露対策など食品衛生管理の基本を知っていることで、食品工場としての「あるべき姿」を理解した上で自信を持って話せるようになり、建築のプロとしての提案もより説得力が向上したと思います。
Q : ヤマウラ様の事業にはどのように役立っていますか。
山浦 : 専門的な知識や技術を有しているという私たちの強みを明確に打ち出し、食品工場分野の受注を強化するため、令和3年1月に食品工場専門ブランド「オイシールド」を立ち上げました。当社は以前から食品工場を多数手掛けてきましたが、そのノウハウは一部の設計担当者や建築技術者にとどまっていたため、ブランド構築時には、それぞれのノウハウをデータベース化し「食品工場の標準化」に取り組みました。ブランド立ち上げに携わった者の多くがHACCP設計士を取得していたので、この作業もスムーズに進んだと思います。また、これに伴い、ホームページやパンフレットなどを作成しましたが、こうした営業ツールもHACCPの知識があったからこそできたと思います。おかげさまで最近は多くの引き合いをいただけるようになりました。
島岡 : 食品工場の改修や建設に関する情報は、今までは営業スタッフが足で稼いでくることがほとんどでしたが、ブランド立ち上げ後はホームページやDMで送付したパンフレットを見て、問い合わせをいただくことが増えました。山梨県や岐阜県など近県からも引き合いがきています。令和3年9月に「オイシールド」が日本食糧新聞社の 「第24回日食優秀食品機械・資材・素材賞」を建設会社として初めて受賞したことも追い風となっています。また、「HACCP設計士」の肩書きを名刺にも記載しました。これを見て話が広がることもありますし、「HACCP設計士がいるから安心ですね」と言われることもよくあります。お客様の安心感につながっているという点でも高い効果があると感じています。
Q : オイシールドの受注状況や今後の見通しを聞かせてください。
山浦 : 今期は受注ベースで19.5億円で、売上高全体に占める割合は9.5%です。大手スーパーなどの要求に応えるため、食品工場の新設・改修案件は今後まだまだ増えると予想しており、来期は30億円の受注を見込んでいます。数年後には、受注高を50億円、売り上げ比率を20%まで引き上げたいと考えています。
Q : ところで小沼先生は建設業の方がHACCPや食品衛生管理に理解を深める意義について、どのようにお考えですか。
小沼 : 一般衛生管理プログラムやHACCPに取り組む上で、建屋そのものが食品衛生管理を考慮して作られていることは非常にメリットが大きいと思います。後々、工場内で何か変更がある際もスムーズな対応が可能になります。今後、ヤマウラさんに期待したいのは建屋だけでなく食品工場向けの土地を含めたトータルでの提案です。輸送や人の流れ、防虫などの観点から立地条件を見極め、最適な土地も提案できる企業になっていただければと思います。
山浦 : 実は令和3年に事業用地を探している方と土地を活用したい方をマッチングするソリューションサイト「TOCHIFUL(トチフル)」を立ち上げたところです。食品工場として事業用地を探している方との商談には、今回の研修で学んだ知識を生かしていきたいと思います。
Q : 最後にこれからの抱負をお願いします。
山浦 : HACCP設計士をまだ取得していない社員から取得を希望する声がありますので第二弾も考えたいと思っています。今後も食品衛生管理に関する知識やノウハウ、技術力を高めるほか、新技術の開発・導入にも積極的に取り組み、食の安全の向上に寄与できるよう努めてまいります。最近はFSSC22000をはじめ、より高度な衛生管理の構築を目指して、工場を新設する企業からのご相談もあります。そんなときは髙澤さんと連携を密にして取り組んでいて、今後もWin-Winの関係を続けていきたいと思っています。
担当 : FSSC22000の中にはISO/TS22002シリーズという工場の施設設備関係の要求事項もあります。食品衛生管理についての学びをステップアップさせていくために、引き続きサポートさせていただきますので、これからもよろしくお願いいたします。
株式会社ヤマウラ
https://yamaura.co.jp/
「オイシールド(Oishield)®」
https://yamaura.co.jp/sector/builds/haccp/