Q : 塩田に海水をまき、塩がついた砂に海水をかけて濃い塩水を作り、釜で炊いて塩に仕上げる「揚げ浜式製塩法」。500年以上前から奥能登に伝わる製法で、世界農業遺産「能登の里山里海」を構成する地域資源の一つです。
Ante様ではこの揚げ浜式製塩法で製造する塩について、2022年8月にHACCPの認証を取得されました。そのきっかけについてお聞かせください。
中巳出 : 当社では、石川の農産物や伝統技術を利用した商品開発を通じて地域に貢献することを企業理念に掲げ、事業展開しています。揚げ浜式製塩法による塩作りを始めたのは2017年のことです。当初からHACCP認証を取得したいと思っていたのですが、密閉された空間で作るわけではありませんし、専門家に尋ねても「難しい」と言われるばかりで、諦めていました。 そのため、海水を特殊なフィルターでろ過し、マイクロプラスチックなどの異物を取り除いてから塩作りに使ったり、灰が混入しないよう釜場を遮蔽したりするなど、私たちに考えられる方法で安全安心を守る取り組みをしてきました。
髙澤 : 加賀市にある本社の皆さんも、そこから車で2時間半ほどかかる珠洲市の塩田の皆さんも、とにかく真面目に熱心に塩作りに取り組んでいる印象を受けました。地域貢献や伝統文化の継承を掲げる企業理念にもひかれました。ただ、塩は食品衛生法などで品質規格が定められていないため、食品衛生に関する知識や情報が入手しづらく、不安を抱えている様子でしたので、お力になれるのではと感じました。また、微細なマイクロプラスチックをハザードと捉え、対処している感覚もHACCP認証取得のプラスになると考えました。
中巳出 : もう一つ、私がHACCP認証取得に挑戦してみようと思ったのは、スタッフの存在です。今回は文書の作成・管理能力に長けた磯野、塩田を管理し、実際に現場で塩作りを手掛ける浜士のまとめ役となる西花、そしてチームのリーダーとしてプロジェクトを統括する濱田の3人でHACCPチームを組みました。3人が「やります」と言わなければ、私も踏み出せなかったですし、今回のHACCP認証取得は、このチームの勝利以外の何ものでもないと誇りに思っています。
Q : これからの抱負をお聞かせください。
濱田 : 今回作ったHACCPシステムを運用しながら、おいしくて安全安心な塩を提供していきたいと思います。決してこれでシステムが完成したわけではありませんので、改善すべきところは改善して、2年目以降は自分たちの力でしっかり運用できるようにしていきたいですね。
中巳出 : 食品衛生管理の国際基準であるHACCPの認証を受けて安全安心を担保している伝統的な製法のおいしい塩が日本にある。そのことが世界に伝わっていくのが私の夢です。伝統だからと進化を怠れば、次代に引き継いでいくことはできません。自然の恵みを生かしつつ、これからも時代に合わせて、塩作りを進化させていきたいと思っています。
髙澤 : 私が調べた限りでは、古式製法の塩作りでHACCP認証を取得した例はありません。さらに揚げ浜式製塩法のブランド価値向上を目指すのであれば、SQF(Safe Quality Food)という認証の取得も検討されてはいかがでしょうか。SQFは食品の安全だけでなく品質を担保する規格です。ぜひ、こうした規格も活用しながら、これからも伝統文化の継承・発展に寄与されることを願っています。
株式会社Ante ホームページはこちら
https://ante-jp.com/
DENEN
https://sio-denen.jp/